スカーフの額装例
加工手順
支給スカーフのシワの寄り方・バランス・張力過多による形のゆがみ、完成寸法の位置決めなどを確認し、仕上がりまでの一連作業の計画と見積もりを策定。
スカーフなどの生地は、アルカリに敏感だったり裏板からのアクや劣化要素が表面にしみ出しやすい素材です。単に額縁に入れるだけでは、こうした劣化要素のほかにズレも起きやすい素材です。
製作手法:ご予算 スカーフ生地 折れ目 などの要素を加味して以下の①②のいずれかでご提案しています。
①窓を開設したマットボード仕様ですと、ごく一般的な水彩画や版画に見られるイメージになり、格安です。
そのかわり、シワが解消されず、位置決めも微妙なためデザインバランスが崩れやすい傾向があります。
②立体仕様の場合、例えば油彩キャンバスのような状態にしてから額縁装填します。この場合は位置ズレを起こしにくく、額装後の立体感も感じられます。価格は割高になります。
※生地の位置固定方法はいくつかあり、厚さやシワの具合などベターな施工法をご提案しています。
1 スカーフ所見 難易度は高め。
・大きさは約900×900㎜ (ロック歌手氷室京介さん)
・素材は極薄のシルクサテン、折れシワ癖がついている。
・素直に延ばせず、偏りがある。
・正円の構図(白い円)があり張力バランスが重要。
・ヒートプレス機による裏打ちは困難。
・バキュームの吸込みでも構図バランス維持が困難。
・裏打ち支持体には無伸縮で非木材の平滑材が望ましい。
2 パネル張りの立体仕様イメージで計画。
・折り癖の平準化が裏打ち縫製手法での張力でも難しいと思われ、パネル張り方法にて計画
・テーブルに専用作業台を設置
折り・巻き込み・乾燥などの工程から自由度のある専用台を用いています。
・支持体に耐水性の非木材合板3t(※)を使用し、立ち上がりの厚さ確保用に特殊ハッポーを支持体と同寸で接合設置。
・仮止めを行うための中性両面テープを周辺小口に設置。
(※)反りが起きない無伸縮の耐水中性ボード
3 仮固定と自然乾燥
・支持体にスカーフを乗せて、霧吹きも使いながら馴染ませる。
・完成イメージになるようスカーフを導きながら注意深く構図バランスを確認。
・小口のテープに仮接着させて位置を確定(※)。
(※)生地固定
支持体との固定方法には中性両面テープのほか縫製・表装裏打ち・タックス・マチ針・・等々状況に応じて選択しています。
4 本固定
・乾燥後の位置ズレがないことを確認し、耐候性に優れたテープで裏面側を本固定。
・特殊ハッポーに9箇所の矩形を穿孔し、同寸同厚の木板を埋め込み接合。この木板と額縁裏板をビス接合して一体化を図る。
・非木材合板は、水・テープ張力による反りの不安は少しもなく、また劣化因子を持たない素材のため、安心して作業ができます。
5 額装
大体この辺までの加工代¥30,000〜40,000(簡易なマットボード仕様にすると¥4,000前後になりますが、バランスが微妙に崩れやすいです)
・カラーボードの選択。
パネル張り作品として、約10㎜立ち上がる立体感をイメージ化。
背景空間にキャラクターの華やかさが伝わり、額縁色との調和が取れるようなカラーボードの選択。
6 仕上がりとスカーフの原状回復
・スカーフが支持体に吸い付くように張られ、シワもなく構図上の大切な円周もきれいに確保できました。
・熱プレス方法の接着や縫製では、設置したときの微妙なズレで円周デザインを歪ませる心配があります。特に熱プレスではやり直しが困難でスカーフの原状回復が見込めません。
・今回に限らず、原状回復の確保を常に心がけています。今回の接合方法は仕上がりサイズまでの原状回復(オーナーに了承を戴いています)が可能です。
7 完成 (額縁代は棹により変化します 今回は約¥25,000)
オーナーの希望に沿った棹額(モールディング)を製作し、支持体と一体化して完成。
裏板にも非木材耐水ボードを使用し劣化対策しました。
①耐水裏板からアクがしみ出すようなリスクが避けられます。
②特殊ハッポーの静止空気層が、背面から侵入する温度変化を和らげます。
裏板とフレーム本体はいわゆるトンボで留めです。これは後日メンテナンスの必要が発生したとき、ユーザー自身で開封しやすくするためです。 ビス留めやテープの目張り仕上げは、ユーザーによるメンテナンスが難しいと思っています。
厚もの生地13㎜の額装例
厚地の装飾縫製品で、厚みがおよそ13㎜前後で80×93(㎝)の作品例。
となりの画像をご覧頂ければその厚さが伝わると思います。
スカーフとは比べるまでもない厚さです。
自重による垂れ落ちを防ぐため、耐水ボードに縫い付けて固定します。木製板だと必ず変色を発生させるため、耐水のホワイト素材を用います。
棹が厚みのある材や反り気味の場合には、強力なコーナークランプで接合固定してからV型クギの打ち込み、ステンレスビスでの締め付け、木くぎでの接合など、ニーズに合わせて接合方法を選択します。
今回の仕様はアクリルなしで、生地全体を覆うような額サイズのオーダーです。原状回復は縫いつけ糸を外せば回復できます。